「英作文問題集」の工夫のすべてを公開

英作文

参考記事:英作文力をつけることばっかり考えていたら、ベネッセに取材された話。

参考記事内でもお伝えしましたが、ある年に英語科教員と連携して学校独自の問題集である「英作文問題集」を作成しました。

これまた、この冊子、がっっつり中学生のライティング力を伸ばしてくれるんですよ。

力が伸びまくって、Benesseから取材が来ましたから。笑

今回は、その実践の「肝」である「英作文問題集」についてを余すことなく公開します!

作成のきっかけ

中学校で10年間英作文を指導していく上で感じていたことが、「生徒たちはライティングの努力を重ねていったん力をつけてしまえば、なかなかそのライティング力は落ちてこない」ということでした。
英語の勉強を始めたばっかりのころは数文の英文しか書くことができなくても、とにかく数多くの英作文を書き上げことで、力は落ちてきません。

しかしながら、当時の授業マネジメント上、定期テスト前に数問の英作文の取り組み、生徒のライティング力を伸ばすことができないでいるのが現状でした。

そこで、他の英語科教員と協力して、「英作文問題集」という学校独自の問題集を作りました。
各学年の文法シラバスを振り返って、どの学年のどの時期にどんな英文法を学習し、どんな語彙力をつけていくのか、五名の英語科教員で春休みの一週間をかけてすべて書き上げました。

そして、それを手掛かりに各学年100ページを超える専用の「英作文問題集」を作り上げました。
冊子になっている自分専用の問題集が生徒一人ひとりに用意され、生徒たちは今まで「どのくらいライティングを積み上げてきたのか」、「次の定期テストまでにどのようなライティングを積み上げていくのか」「どの時期にどのあたりまで力を伸ばすべきなのか」、見える化することができました。

また、過去の卒業生のライティング作品も問題集の中に取り入れることで、先輩の作品に対する憧れを持つことができるようになった。各テーマに卒業生の優秀作品をちりばめることで、その書き方を真似したり、参考にしたりすることができ、今現在でもこのページは好評です。

このように、英語科全員がかなりの労力を投入してこの「英作文問題集」を作り上げるようになったのかは、どの英語科教員にもある共通した思いがあったことが理由です。

それは、「生徒たちが中学校3年間を通してまとまった英語の文章を書き上げる機会が少なすぎる」という思いです。

それまでの英語科の授業システムでは、教科書の読み取りや文法の指導に時間を取りすぎていて、生徒の自由な発想であったり、中学生らしい思い・意見が伺えたりするような英語の文章を書かせることがでいました。

定期テストや高校入試には必ず英作文に関する問題が出題されるにも関わらず、テスト前に場当たり的に英作文を指導してしまっていました。

プロ野球選手に例えるなら、野球選手の仕事は試合に出場してヒットを打つこと(実際に英作文すること)なのに、それをさせないまま素振り(教科書の読み取りや文法指導)ばかりさせてしまっていたのです。

今思えば、当時の生徒たちは「英語が苦手・嫌いだから英作文を書かない」わけではなく、単純に「英文を書く機会が少なすぎて、書きたい思いはあっても、どう書いたら良いのか分からない」状態でした。

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特徴

・中学生が手に取りたくなるような工夫をちりばめる
・各学年100ページを超えています(3年生専用のものは130Pを超え)
毎週1回、1つのお題に関して英作文を書いて提出
10文以上の英作文が目標
・「書いて終わり」ではなく、「清書」のシステムがある
Fast LearnerとSlow Learnerのどちらにも対応

それでは1つずつ見ていきましょう!

手に取りたくなるような工夫

工夫① 表紙にこだわる

中学生が最も目にするところ、それが表紙です。
ここからこだわりました。美術部とタイアップして、美術部員に書いてもらいました。
表紙はこんな感じ↓で、イラスト風になっています。


この表紙↑は、英語の知識を1つずつ積み上げて完成していくイメージ(3年生)。


この表紙↑は、英語に出会って学習を進めていくイメージ(1年生)。

この工夫で、少なくとも美術部員は手に取るようになります。

工夫② 各学年を5つの期間に区分けする

学校現場は、「超」がつくほど忙しく、相当高い実践の意識を持っておかないと、日々の業務に忙殺され、落ち着いて生徒の学力向上について考える時間がありません。

そこで、3年生の3月に実施される県立高校入試や私立入試を乗り切るために、どの時点でどこまで力を付けておくべきか、英語科教員で落ち着いて共有する必要があるのです(できれば年度が始まるまでに)。
例:1年生の10月までに、三単現のSを使った「他己紹介」を正確に10文以上書ける など

また、中学生にとっての大きなテスト(中間テスト・期末テスト)は年間5回あるので、学年を図のように5つに分けて、どの期間にどんな文法を学習して、どの期間までにどのくらいの力を付けておかないといけなくて、どの期間にどんな単語を勉強していくのか、すべて洗い出して表にしました。

気候が安定して、クラス・学年も落ち着きを見せる9月から1月までを「学習充実期」として、多くのお題を課します。

ただ、1年生の4月から6月の間だけは、英語学習の初心者であり、とてもデリケートな時期なので、ここでは英作文を宿題として課すことはしませんでした。

*ここでの学習方法・取り組みが今後の中学校での英語学習を左右すると言っても過言ではありません・・・。
この時期についても、「フォニックス」を使ったおもしろい取り組みをしていたので、別記事で紹介します!

また、学習初期段階での英作文問題集は、4線を入れました。

図の各期間が終わると、生徒たちは定期テストを受験するイメージで期間を区分けします。

また、当然ですが、その期間に取り組んだテーマの中から、定期テストのライティングを出題します。
例えば、2年生が学習充実期①で10個のテーマについて取り組んだとしたら、その10個の中からテストが出題される仕組みです。

この工夫を生徒にとっての「見える化」とするために、下の写真の用意にページ左上に、「○年○○テスト」のように記載することで、生徒にとってはより取り組みやすくなりました。

*左上に↑「第1回校内テスト対策テーマ」とあります。これは、第1回の校内テスト(中間テストのようなもの)で出題範囲であるという意味。

以上のように、3年間を合計15の期間(1年生の学習初期を抜くと14)、それぞれでどのくらいの力を生徒に付けさせるのか、イメージして英作文問題集のお題を決めていったのです。

工夫③ お題を学校行事と絡める

学校には一年間を通して、様々な行事があります。
学年によっても、それは大きく異なります。

それらを英語の授業と絡めることで、テーマが生徒にとって身近なものになると考え、自作の「英作文問題集」の中に学校行事に関するお題を取り入れました。

例えば、3年生の6月には修学旅行があります。事前の準備に何時間もかけて、お金と時間を使って行う、言わずと知れた中学校最大の学校行事の一つです。

これを英語の授業にも生かすべきだと考え、修学旅行から帰ってきた週に、英作文問題集の中で「修学旅行の3日間、どんなことをして、どんなことを考えたか教えてください」というテーマで英作文をさせます。

クラスメートと大いに楽しんだ思い出があるので、生き生きとした英語表現をするようになりました。
また、同じように各学年の遠足や文化祭、校外学習の時期を年度当初に英作文問題集の提出時期に反映させます。
例:文化祭のある9月の第2週の英作文のお題は「文化祭で何を見て、何を感じたか英語で教えてください」など

そうすることで、生徒にとって身近でかつ普段体験できないようなことを英語で表現しようとする手掛かりとなります。

「生徒の身近な話題」「生徒にとって楽しい思い出になっていること」を英作文の話題とする方法が有効な手法だという思いは現在も変わりません。
無味乾燥な話題をテーマとした英作文に取り組んだ時の宿題提出率よりも、上記のようなテーマで取り組んだ時の提出率のほうが圧倒的に高いからでする。

そして、中学校三年間での行事や取り組みは、ほぼ毎年変わらないので、いったん英作文問題集に収録してしまえば、来年度からの英語教員の業務削減・効率化にもつながるという思いもあります。

工夫④ 問題集の最初のページには、英作文の方法を収録する

これだけの工夫を凝らしても、英語が苦手な生徒・低学力層の生徒にとっては、英文をいくつも書くことは難しいものです。
そこで、問題集の最初のページには、とにかく分かりやすく英文を書く方法を記載しました↓


できるだけ「主語」や「動詞」といった文法的な用語は使わずに、「誰が」「誰は」や「どうする」などと置き換えて、分かりやすく記載しました。

また、「意見文」と呼ばれれる論理的に英文を書いていき、文章を書き上げる方法もここに記載しました。
英語が苦手な生徒も、分からなくなったらここに戻ってこればなんとか英文を書くことができるように工夫したのです。

工夫⑤ 過去の先輩の英作文作品をちりばめる

この英作文問題集の中には、ところどころ先輩の作品をそのまま載せています↓

ねらいは2つあります。

1つ目に、「先輩が書いた優秀な英作文を読み取ることで、モチベーションを上げること」です。
「こんな風に書きたいな」とか、「こんなたくさん英作文を書けていてすごい!」とか、「こんなに長い英文を書けていて、たくさん勉強したんだな」とかいう気持ちを持ってほしいのです。

2つ目は、「先輩の英作文を見て、先輩でも間違いを繰り返しながら力をつけていったことを知る」ことです。
優秀なライティング作品は多数記載していますが、間違えて直されている作品のワザと記載しています。
そうすることで、「間違いは普通である」「間違えて当然」と思ってくれます。
生徒の中には、「間違えたら恥ずかしい」と思っている生徒がいます(かなり)。
そういった生徒は、たくさん直しをされている先輩のライティングを見て、「間違いを繰り返しながら上手になっていく」と感じ取って欲しいのです。

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各学年100ページ超え

上記のような考え方で、問題集を作ったら、各学年100Pを超えていましたw
各お題は下記のように3ページで1セットになっています。

【1ページ目】そのお題に関する「和文英訳」に取り組む。


例:お題が「あなたの一日を教えてください」だったら、ここで「わたしは6時に起きます」を英文に直す。これを各お題1つにつき約10個作りました。

ぶっちゃけ、英語が苦手な生徒は、ここだけがんばって、英作文ではここの英文をコピーすればできちゃいます。笑
ただ、何度もこの問題を取り組んで欲しいという思いで、下のような表記も付けました。
また、英語が苦手な生徒のために、「文頭に○○という単語を!」とか、「この問題は○○に注意!」などとヒントも書きました。

また、何度もこのドリルを説いてほしいという思いから、このページの下にこんな表示を入れました↓

5回目までの表示を入れることで、暗に「1回で完璧に解ける生徒などほとんどいない。何度も練習が必要です。」というメッセージになっています。

【2ページ目】そのお題の「英作文」に取り組む(練習)


2ページ目は、英文をどんどん書いていくページ。
書き取る英文は多ければ多いほど、生徒を褒めます。

【3ページ目】先生の添削を受けて書き直す(清書)


3ページ目は、下書きを提出して、先生に直してもらった英文を書き直すページ。
この「清書」が大切なんですよね。

これについては、後述します。

週1回提出

生徒たちは、毎週1回、「和文英訳」のページ、1つのお題の「練習」ページ、前の週に先生に添削してもらった(といっても答えは教えないけど・・・)練習ページを見て「清書」のページへ書き直しをして担当教員に提出します。

ただ、先生方の取り組みに差があってはいけないと思ったので、この画像のように問題集の裏表紙に「いつどのページを書いて提出するか」年間分を印刷して貼り付けていました↓

これで先生方の取り組みは統一することができますし、生徒にとっても年間の英作文の宿題を見える化することができて、自分のライティングの取り組みが積み上がっていく様子を見ることができます。

10文以上が目標

ぶっちゃけた話、「3文の英文で書きましょう」とか「5文の英文で書きましょう」とか、そんな少ない英文をちまちまと書いていたところで、ライティング力の伸びは小さいです(伸びることには伸びるでしょうけど・・・)。
そこで、この英作文問題集ではあくまで「10文以上」の英作文を書いてくることを目標としています。

特に、1年生の2学期ころまでに「英作文はたくさん書くもの」という意識付けをしてしますと、後々の指導が減って楽です。さらに、書けば書くほど力が伸びていくものなので、たくさん書くものだという意識を持たせてしまうと、その後の伸びが違いますよ。

「清書」システム

1度英作文を書いて先生に提出しただけでは、絶対にライティングの力は伸びないと思います。
書き直しをされて、もう一度生徒の英語で書き直す、清書することで力は伸びます。

また、「生徒の自主性や自律を育てたい」という思いから、1回目の提出時に「あえて正答を教えない」という取り組みを行っています。

先生が生徒の英作文を添削することで、生徒の勉強になることはなく、先生の「間違い探し」になってしまうと考えているからです。

また、正答が書き込まれた英作文を生徒はそのまま直しをすることで、生徒の思考は停止し、単なる書き写しの時間になってしまうと考えたからです。

現に、私がそういった指導をしていた時は、生徒のライティングの伸びは少なく、教師ばっかりが苦労して、肝心の生徒の学力は伸びないということがありました。

生徒たちは間違えた個所や個数のみが示された英作文を見て、どこがまちがったのか考え、調べて、書き直してきます。

この手法は、いい英作文を完成させるために一見遠回りのように思えるが、生徒の英語力の伸びは大きいです。
「またこのミスをしてしまった」とか「ミスはどこにあるのだろう?」と考えるからです。

教師が正答を書き込んでやるのは、二回目のライティングである「清書」の段階でいいのです。
こうして、いったん突き放すような手法を取って、自律を育んできました。

今、この手法とっていた3年間間を振り返ると、生徒たちにはとても苦労したと思います。
ミスの個数などだけで返却された自身の英作文を見て、書き直さなければならないからです。

それでも結果として、3年間この方法で指導された生徒たちは、卒業直前に受検した外部検定試験のライティング部門でとても高いスコアを記録することになりました。

これからも、英作文の添削時にはこの手法をとっていくつもりです。

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Fast Learner・Slow Learner対応

教室で約30名の生徒を教えていてまずぶつかるのが、学力格差。
中学校三年生になっても語順の意識がなく、日本語を組み立てるように英文を書いてしまう生徒がいる一方、中学校三年間の学習をほぼ終えて、高校レベルの英語力がある生徒もいます。

そんな中で、学力が低い生徒が英作文を書くことができずに固まってしまうのは時間がもったいないですし、力がある生徒が速くライティングを「ハイ、おしまい」では、時間がもったいないです。

Fast Learnerのために取った工夫。

この英作文問題集が100Pを超えていると言っても、英語力のある生徒は3学期の中盤くらいに終えてしまうことが予想されます。そこで、こんなページ↓を設けました。

英作文上達への道として、過去の入試問題(県立・私立)をピックアップして、収録しました。
また、実力テストや過去に色々なテストで出題されたもの10年をさかのぼって一覧にしておきました。
過去10年の問題を一覧で見ることで、生徒(と教師)の問題分析力を鍛えることも目当てとしています。

Slow Learnerのために取った工夫。

英語って、かなり学力差があるので、Slow Learnerに対するケアってとっても大切。
「ハイ、修学旅行について英語で60文書きなさい」と言われても書けませんて、そりゃ。
*勤務している学校では、3年生の修学旅行後に60の英文を書かせていました。
そこで、和文英訳のページを作ったり↓


*テーマに関する英訳問題なので、ぶっちゃけ丸写しでもOKになっている

先輩の作品を記載したり↓


*これもそのときのお題に関して先輩が書いたものなので、パクリOK。

教科書のどのページを参照すれば英文を書けるのか、記載しています↓

英語が苦手な生徒が一定数いるのは確かです。
また、人気のない教科であることも確かです。
ですが、Slow Learnerのために、ここまでケアして初めて、指導ができると思っています。

生徒の自律を育てる

自分は、勝手に中学校教育の大きなキーワードは「自律」だと思っています。

何でも「手取り足取り」環境を整えるのではなく、どこかで「突き放すような指導」があってもいいと思っています。

その1つが先程紹介した「あえて正答を教えない指導」です(二回目には教えるけど・・・)。

もう1つ、この「英作文問題集」で「自律」を育てるためにとった工夫は、このページです↓

 

問題集の最後に、英語上達への30題というページを設けたり、「これ以降は皆さんの自主性にお任せします」という文言を入れました。

3年生の後半になると、高校受験が気になりだすので、そこを鑑みて生徒の自律を図ろうというものです。

生徒たちは、自分でお題を選び、担当の教員に提出、添削を受けるシステムです。

 

以上、「すべての中学生に高いライティングの力をつける「英作文問題集」の工夫のすべてを公開しようと思う。」でした!

いや〜書いた書いた!これでぜんぶっ!本当ぜんぶっ!
文字数、7000超えとるやんけ・・・。原稿用紙、18枚分にも上る「英作文問題集」の工夫でした〜!

ちなみにこの「英作文問題集」をモデルとして、「明治図書出版」から書籍を出しました!
ぜひ、チェックしてみてくださいね!